バックスタンプから見えるもの
2024.12.12
当店のホームページにはカフェや商品の情報だけではなく、私たちの「思い」もたくさん紹介させていただいています。例えば、私のコーヒーへの拘りだったり…そのページの中に、次のような一節が載せられています。「特に浅煎り用のカップは、裏の窯印が『ヤジロベー印』になっており、これは1911年から1940年頃に作られたことを意味します」。これは、浅煎り珈琲をご提供する際に使っているカップを紹介しているところですが、今回はこの辺りをもう少し詳しく紹介してみようと思います。
先ず、その浅煎り珈琲用のカップの窯印-バックスタンプをご覧いただきましょう。
見ての通り、このカップは日本陶器会社の製品で、そのブランド名(現在は社名になっています)である「NRITAKE」の文字と共に、高級磁器を手掛けていることを誇示する「RC(Royal Crockeryの略)」と安定した営業を象徴するヤジロベーのマークで構成されています。RCとヤジロベーが組み合わされたバックスタンプは、1908年に商標登録されたものですが、こちらの日本陶器会社の文字と共に使用されているバックスタンプは、1912年から1914年に作られた製品に使用されていました。つまり、このカップは少なくとも110年前に作られたアンティークであることがわかります。
ちなみに、我が家にはノリタケ製の小さな小さなカップがあるのですが、そのバックスタンプがこちらになります。
こちらはもう、ストレートにノリタケ製品であることを示しています。このバックスタンプは1932年の国内向けの製品に使われていました。浅煎り珈琲用のカップに比べると、だいぶん時代が下りますが、それでも90年も前に作られたものになります。
この様に、バックスタンプを見ることで、陶器で出来たカップやお皿などの歴史を、ほんの少しながら知ることが出来ます。そして、とても繊細な陶器類が、100年もの間、欠けることもなく残っていることに驚嘆せずにはいられません。
ところで、110年前に製造された浅煎り珈琲用のカップでこの1年間、お客様にコーヒーをご提供してきました。てんぐーとで浅煎り珈琲を飲まれた方はもうご存じのことと思いますが、このカップ、とても薄いんです。多分、厚さは1ミリもないでしょう。驚くことに、そんな華奢なカップがこの1年間、割れることは勿論、全く欠けることもなく今も活躍しています。それはきっと、お客様方もこのカップを、とても大切に扱ってくださっているからなのでしょう。そして、このカップ同様に、てんぐーとはオープンしてからのこの1年間、お客様方の善意と優しさのお蔭で続けることが出来ました。本当に有難うございます。そんな素敵なお客様方がゆっくりくつろげるようなお店を、今後とも目指していきたいと思っています。