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困ったひび割れと魅力的なひび割れ

2025.12.04

冬の訪れとともにやってくるのは「寒さ」。でも、それ以上に厄介なのが「乾燥」です。何が厄介かと言うと、高齢化に伴ってひどくなっていく乾燥肌。もう背中は痒い、腕は痒い、脚は痒い…全身カユイ。でも、これはお風呂上りにギトギトにクリームを塗ることで何とか解消できる範囲。本命は、水仕事につきもののひび割れ。悲しいことに、てんぐーとのキッチンには食洗器なる便利なものがありません。使った食器類は、ただひたすら手洗いです。余裕がある時は手袋をして洗っているのですが、時間がない時には素手のまま。しかも、油汚れがなかなか落ちないので、お湯を使っての作業がまた、それに輪をかけてお肌を苦しめる。3日間の営業が終わるころには、指先だけでなく手のいたるところにひび割れが出来ています。それを月曜日から木曜日までの間に、どうにか痛くない程度に養生して、また金曜日からの仕事に臨む、この繰り返し。もうどうしても痛みが我慢できない時には液体絆創膏を塗っているのですが、アレ、結構ガビガビになって見た目が良くないんです。だから、接客の際にはあまり指先を見つめないでくださいね(笑)もしどなたか、良いお薬をご存じでしたら(ひび割れが一晩で改善するような!)教えてください。よろしくお願いを致します。

ところで、器にも「ひび割れ」が出来ますよね、そう「貫入」ってやつです。正確に言うと、器の表面を覆っている「釉薬」に出来るひび割れ模様のことです。陶磁器と言うものは、その器を成形する「素地」と呼ばれる土に、「素地」を水分から保護すると同時に様々なスタイルやデザインを表現する「釉薬」を塗ってから窯で焼かれます。そして、焼きあがった陶磁器を窯から出すと、収縮率の異なる「素地」と「釉薬」の間で縮み方の差が出てきます。具体的に言うと、「釉薬」の方が「素地」よりも大きく縮みます。この両者はしっかりと密着しているので、結果的に「釉薬」の表面にヒビが入ります。これが「貫入」です。

また、使っているうちに「貫入」が入ることもあります。例えば、器に熱い料理を盛り付けたとしましょう。そして、料理が冷めていくと…そこに温度差が生まれて、陶磁器の窯出しと同じような現象が起こります。

このように「貫入」とは、陶磁器にとってはある意味必然のモノ、それを「見どころ」とするか「不良品」とするかは人それぞれです。私は勿論「貫入」肯定派。例えば、こちらの器。

フランスはGIENのカフェオレボウルですが、器全体に入った貫入が何とも言えぬ魅力を醸し出しています。ただの古い白磁のボウルですが、貫入が入っているだけで、このコが過ごしてきた時間やストーリーが思い浮かんで、とても愛おしく思うのです。そしてこれは、アンティークやビンテージに向き合った時に持つべき大切な気持ちのひとつだと私は思っています。